「図書館政策フォーラム2011 図書館で電子書籍を使いこなす-知の拡大生産に向けて-」

本レポートは2011年5月28日(土)に京都キャンパスプラザにて行われた「図書館総合展フォーラム2011 in 京都」のイベントの記録になります。
担当者が見聞きし、理解した範囲での記録になりますので、その点ご了承頂いてご覧ください。

なお、本レポートは第13回図書館総合展/学術情報オープンサミット2011で実施する記録作成プランのデモンストレーションになります。
(出展者様に向けた記録作成プランの詳細はこちら【PDF】
それではどうぞ。

「図書館総合展フォーラム2011 in 京都」の詳細

日時:2011年5月28日(土)13:30-16:00 (開場:13:00)
場所:キャンパスプラザ京都
主催:図書館総合展運営委員会
後援:国立国会図書館 京都府図書館連絡協議会
  

プログラム

第一部 基調講演「ディジタル時代の知識インフラと図書館の役割」
      長尾真(国立国会図書館長)
第二部 パネルディスカッション 「図書館で電子書籍を使いこなす-知の拡大再生産に向けて」
     パネリスト:川瀬 真(横浜国立大学国際社会学研究科教授 前文化庁・著作権課著作物流通推進室長)
     パネリスト:大場 利康(国立国会図書館関西館・電子図書館課長)
     パネリスト:井上 真琴(同志社大学 企画部企画室 企画課長)
     コーディネーター:湯浅 俊彦(立命館大学文学部准教授)
  

配布資料

  • 湯浅俊彦氏「「図書館政策フォーラム2011 図書館で電子書籍を使いこなす-知の拡大生産に向けて-」開催趣旨」
  • 長尾真氏の発表スライド「ディジタル時代の知識インフラと図書館の役
  • 川瀬氏の発表スライド「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議について」
  • 「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」(「デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方に関する事項」に関する議論の整理)
  • 大場利康氏の発表スライド「国立国会図書館における所蔵資料大規模デジタル化と「電子書籍」収集制度化へ向けた取り組み」
  • 井上真琴氏の発表スライド
  • 2011年2月3日付 新文化 1面「電子納本と長尾国立国会図書館長構想の問題点」
  • 2011年5月19日付 新文化

  
  

記録

(以下敬称略)  

当日の映像記録(Ustream)は以下の2つになります

  
Twitterでの関連Tweetのまとめ
Togetter:2011年5月28日(土)図書館総合展in京都 Tweets with #LF2011

    
当日の様子

  
  

開会の挨拶(佐藤潔 図書館総合展運営委員会委員長)

昨年開催された図書館総合展

  • フォーラムは全部で81、参加者数は述べ2万4千人
  • 総合展のアンケートにもっと(開催地を)広げて欲しいとの声があり、京都で開催する運びになった

東日本大震災を受けて

  • 東日本大震災があり、どのように運営していくのか。知のインフラをどのように構築していくのか
  • 図書館総合展では、東日本大震災からの復興について、メインでフォーラムを設けたい。今年だけではなく、継続して行っていきたい
  • 東北の文化をさらに発展させるにはどうしたら良いのか。MLAK。Kは公民館。東北では公民館の役割が大きい

4月27日に、文化庁から画期的な答申が行われ、このフォーラムも非常にタイムリー
今後も図書館総合展にぜひご注目・ご参加いただきたい

  
  
  

第一部 基調講演「ディジタル時代の知識インフラと図書館の役割」(長尾真 国立国会図書館長)

  

就任時に最も「やりたい」と思ったこと

  • 日本中の人たちに、図書館が持っているあらゆる知識を利用してもらうこと
  • 現在は、図書館に来館しないと情報を利用できない
  • しかし、現在の情報技術を活用すると、(技術的には)いつでも誰でも、情報を利用することができる
  • 著作権法など、そのような問題をどう解決すれば、先人たちが蓄積した知識を活用できるようになるか

  

国立国会図書館が現在提供しているサービス

以上は書誌検索のサービス
今後は、コンテンツ自身を含めたサービスの配信を行いたい

  

資料のデジタル化に関する問題点

  • 著作権(著作権者の許諾が必要)
    • 著作権者を探しだすのに費用と時間がかかる
    • 著作権者が不明な場合が多い(孤児出版物)
    • →孤児出版物の場合は、ディジタル化を行い、著作権者が現れた場合、費用の支払などを行えば良いのではないか?
  • 以上のような問題点に対応するために、法律改正が行われた
  • 著作権法改正
    • 国立国会図書館に限っては、許諾なく資料をディジタル化できる
    • ただし、利用は館内のみ
  • 障害者のための著作権法改正
    • あらゆる図書館で、障害者のために、資料のデジタル化が可能
    • 図書館間送信、障害者への送信が可能
    • 費用の問題で普及しない

新しいディジタル化計画

  • 2年前に補正予算で127億円を獲得(国立国会図書館法を改正のため)
  • 1968年までの図書、雑誌、論文、など約90万冊を2年間でディジタル化
    • ただし、文字化していない(できない)。そのため、障害者の方に提供しにくい
    • ディジタル化した資料は館内でのみ閲覧可能
    • 著作権者から許諾を得る作業を行っているが、なかなか進まない

文化庁の審議会での審議の結果、公共図書館に限っては、国立国会図書館から公衆送信が可能ということで合意に至った。
今後、法制化のための作業を行っていく。法制化されれば、これまで電子化した資料を、身近な公共図書館などで閲覧可能になる

  

インターネット上の情報

紙の資料はデジタル化が進んでいる(今後の予算にもよる)
では、インターネット上の情報(born-digital)はどうなるか?

  • インターネット上にも貴重な情報があり、なんとかして集めたい
  • 国立国会図書館法を改正(参考:国立国会図書館 2009年7月9日国立国会図書館法の改正について
    • 国、地方公共団体、国公立大学、独立行政法人などのWebサイトを許諾なく収集できるように
    • 東日本大震災以降の東北地域のWebサイトは頻繁に情報が公開されていたので、毎日収集した(今は一週間に一度くらい)
    • 貴重な情報が沢山あり、今後役立つのではないか
  • ただし、以上で挙げた団体以外のWebサイト(私企業など)の情報を集める権限は持っていないので、集められない
  • 仕方ないので、インターネットアーカイブ社からの申し出を受け、インターネットアーカイブ社に私企業などのWebサイトを集めてもらっている

  

電子書籍の配信システム

  • グーグルの理想と現実
    • 世界中の情報を集め、世界中の人たちの利用に供する
    • しかし、企業というのは利益中心の面を持たざるをえなく、そこに限界がある
  • 日本の知的資産は、中立的な組織が収集し、透明性が高いように提供する。つまり、公的機関が提供することが妥当である
  • 日本では、国立国会図書館が請け負う(べき)

  

どのように電子資料を収集するか

  • 紙の本を出す手前には、全ての資料が電子データとして存在する
  • そのデータを納本してもらえば、全てのデータが自然と電子データとして残る
  • 出版社だけでなく、個人出版にかんしても、作成したものは国立国会図書館に納めていただきたい
    • ただし、現在は電子出版物の納本義務はない
    • 現在審議会で法制化の作業を行っており、法律としての明文化を試みている

    

出版界との関係

  • 出版物をどんどん集めて、図書館から提供するということを出版界から見てみると、不安
  • 出版界が損をせずに、なおかつ図書館で利用できるようにするには、どうしたらよいか?
  • 数年前に提唱した長尾構想
    • 個人の利用者にも貸出できるようにしたい
    • 同時に複数の端末に貸し出ししないように制限をかける
  • どういうモデルをつくれば、出版界が反対せず、図書館や利用者がうまくいくようになるか?
  • 例えば、国立国会図書館で管理する一つのディジタルアーカイブに集約すると、それがクラウドとなって利用できる
    • 出版社にとって、自分の会社にデータベースを持たなくても、国会図書館から引っ張り出して販売すればよい
    • 安心して販売できるようになる。小さな出版社への負担が軽減するのではないか?
  • 今の日本の電子出版物の流通プラットフォーム→資源の囲い込み状態になっている(あるプラットフォームを利用すると、他のプラットフォームの電子書籍は利用できない)
  • 国立国会図書館で管理すれば、どの読書端末を買っても、どのプラットフォームを利用しても、全ての電子出版物が利用できるようになる。国立国会図書館を利用すれば、そのような流通プラットフォームの形成が可能である。

  
  

これからの電子書籍の世界

  • グーテンベルクの活版印刷術から、電子出版物の世界へ
    • 電子出版の革命は、グーテンベルクと同じといわれている。そうか?
    • グーテンベルクとは抜本的に異なる革命なのではないか。
  • 電子出版物の登場で、端末(著者)と読者の対話が可能になった
  • これからの電子書籍はマルチメディア。絵や写真だけでなく、音声や動画も利用でき
  • 著者にとって、メディアを全て利用して自分の考えを表現できるようになった
  • そういう時代においては、著作物の概念が根本的に変わっていく
  • 将来は、紙の本では絶対実現できないことを電子書籍ができる、そこに積極的な意味を見出す
  • 知識とは、文字の知識だけではなく、音声や映像も知識を担っている
  • そのような知識を、いかにオーガナイズするか
  • 国立国会図書館が扱えるの出版物のみで、それ以外の知識もたくさんある(研究所に蓄積されたデータなど)
  • それらを上手くつなぐことで、誰もが容易に知識を得られる環境を構築したい

  

東日本大震災について(東日本大震災に関わる様々な記録。津波の映像など)

  • 放っておくと、なくなってしまう。あるいは、公開されなくなってしまう
  • 今回の震災のあらゆる記録は、公的な資産であるという認識のもとに、誰でも利用できるようになるべき
    • 学術審議会に提唱してもらいたい、国会で決議をしてもらいたい。そのような努力を現在行なっている
  • 日本中にあらゆる場所にある記録を、今後収集し、4,5年先にはそれらを統合的に検索・利用できるようなアーカイブを作成したい
  • それらは、今後、世界中の人々に利用される貴重な資料となってゆくだろう
      
      
      

第二部 パネルディスカッション 「図書館で電子書籍を使いこなす-知の拡大再生産に向けて」

  

湯浅/
台風を吹き飛ばす勢いで!
まず最初に、パネリストにショートスピーチをしていただく

  

川瀬真「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議について」

平成21年が電子書籍元年になった理由

  • グーグルブックNDLサーチ訴訟和解案の衝撃
    • 和解案に反対しなければ、賛成したことになるよ、という広告
    • グーグル(一民間企業、外資系企業)によって、日本の知の資産が独占されるのではないか?
  • あいつぐ電子書籍端末発売の衝撃
    • iPad、Kindleなど
    • 外資系の企業のビジネスモデルは、プラットフォームの独占
    • 外資系企業による作家の囲い込みの恐怖がある

  

三省懇談会(「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」)

  • 政治主導の審議会
  • 三ヶ月の審議を経て、その結果
    • デジタル化の積極的な推進を前提
    • それを踏まえたうえで、知の再生産の推進
    • オープン型、誰でも参入できるように
    • 知のインフラ、アクセス環境の整備
  • 検討結果は、各省で受けてさらに検討する
    • 経産省:ビジネスモデルの検討など
  • デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方
    • ハブとなる役割を、国立国会図書館に果たしてもらいたい
  • 出版物の権利処理の円滑化
    • 権利を集中的に管理する機関の提唱
  • 出版社に関する権利付与に関する検討
    • 欧米とはことなり、著作者から権利を受けて行使する慣例がない
    • 自分たちの権利が欲しい、という要望

  

「デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスのあり方に関する考え方」の整理

  • 背景
    • 著作権法の改正、補正予算など
  • 一定の条件のもとでの公共図書館への送信サービスの実施を優先
  • 本文検索サービスの実施
    • 現在はイメージファイル。それのテキスト化への合意
  • デジタル化資料の民間などへの提供の推進とその環境の整備
  • それぞれの役割を踏まえた上での公共図書館などの電子アーカイブ化等の検討

  
  

大場利康「国立国会図書館における所蔵資料大規模デジタル化と「電子書籍」収集制度化へ向けた取り組み」

  • デジタル化予算の推移
    • 平成12-21当初の合計で12億円程度だった。補正で一気に127億円が
  • 紙の保存のためのデジタル化と、サービスのためのデジタル化
  • 著作権が処理できたものはネットワークで提供
  • 図書館への配信、検索のためのテキスト化、デジタル化データの民間商用利用が検討会議で合意が取れ、今後推進されていく
  • インターネットで流通している情報
    • 公的機関のものは収集している
    • 民間が提供している電子書籍は収集対象外
  • 電子書籍、電子雑誌等の収集手順
    • 図書、逐次刊行物相当の物
    • 紙媒体のものがあっても収集
    • 有償、無償は問わない
    • 内容による選別は行わない
    • Twitter、ブログなどは含まない

  

井上真琴

大学と公共だと電子書籍の利用が異なる

  • 公共だと電子資料の貸出制限がかかる
    • 24時間本を読んだり、利用しているわけではない
  • 大学や電子ジャーナルでは、ビジー状態はあっても、あいてる時間を利用して利用できる

  

国立国会図書館をどのように利用するか?

  • 国立国会図書館:調査と情報-ISSUE BRIEF-
    • 国会議員のポストに入れられていたような、専門家がまとめた情報が、オンラインで利用できる
    • 政策大会などに参加する学生が積極的に利用している
  • 調査と情報を見せたあと、学生にリサーチ・ナビを使わせると非常に覚えが良い
  • 授業では、学生に前に出て、実際に検索してもらい、その結果を話し合う
    • 近代デジタルライブラリーで検索
    • 「修学旅行の変遷について」
    • 大分師範学校の修学旅行の規定がヒット
    • 他の規定も調べていったら良いのではないか?
    • ポルタで検索→論文がヒット
    • こうした内容で論文が書ける、ということに気づいてもらえる
    • アジ歴の資料:手紙の内容が引っかかる
  • スウェーデンの教員の労働待遇について調べる
    • 既存のデータベース、OPACなどで検索しても良い資料がみつからない
    • Google検索でファイルタイプを指定して、文科省の資料を引っ掛ける
    • なぜ、グーグルで引っかかるのにポルタで引っかからないのか?
    • メタデータを付与して、本文検索できるようにして、納本して欲しい

  

パネルディスカッション

湯浅/
新潮社が全点電子書籍化を表明
一般的には、電子書籍リーダーが話題だったが、本当は、電子出版の流れと図書館についておさえておかなければいかない
ついに、検討会議で公共図書館への配信の合意した
(一般家庭は無理か?ーー相当期間の協議が必要、不可能なわけではない)

図書館での利用がどうなっていくのか?というディスカッションを行って行く
まずは、井上さんからの「なぜGoogleでは検索に引っかかるのにポルタでは出てこないのか」というツッコミに、大場さんに回答してもらう

大場/
情報として我々は保存しているが、細部、報告書類まで検索できるかというと、壁がある
現在は手作業で重要そうなものをピックアップして、検索できるように提供している
井上さんの資料は、残念ながらまだ入っていなかった

井上/
委託調査は重要なので、ぜひ入れて欲しい
現実に、各省のWebサイトに上がっていない場合もある。今後見られるか不安

大場/
支部図書館(各省庁の図書館)を利用して紙の資料を収集しているが、
デジタルのものを収集する際に、統一した窓口に図書館を利用する合意が得られなかった
とりあえず、Webサイトの情報を収集するにとどまっている

湯浅/
長尾氏によるボーンデジタル情報への言及があった
紙の出版がやめられ、PDFなどの電子情報になった。逆に不便になっている?
様々な学会や大学で学術情報が出ている。その中のコンテンツのフォーマットを国立国会図書館が提唱することはないのか?

大場/
今後そうできたらよいと思っているが、我々が強制力を持ってどうこうできるわけではない
ガイドラインを提供できたらいいなと思っているが、まだ手がつけられていない

湯浅/
川瀬さんはその点についてどう思いますか?

川瀬/
そのような話は、行政に課せられた話だと思っている。国立国会図書館ができればよいのかもしれないが、
内閣の方で情報の統制や提供の方法などを話すべきでは
そのような中で、国立国会図書館のアドバイスが重要になってくる
行政の方で、きちっと整理して提供すべきと考えている

湯浅/
文化庁の著作権会議と内閣府の同時並行が行われているが

川瀬/
どこが中心になるか分からないが、今の仕組みでいえば、内閣府の方で各所横断的にまとめる、
一元管理をして情報をまとめるということでは

湯浅/
文化庁と内閣府の間で調整をとったりしていることはないのか?

川瀬/
情報交換は、事務レベルで行われている。ただ、ある課題を発議するときに、課題の発信源が複数になたのは事実
著作権などは、様々な複雑な要因が絡んでいる。そのような課題の発信源が多様化したことは、時代の流れの中でやむをえないことだし、様々な切り口で考えることはいいことだと感じる

湯浅/
堺市立図書館のデジタルの貸出制限の話があった
国立国会図書館でも、当分、一旦デジタル資料を紙にして送る、というのは続くのか?

大場/
今の法律、合意の枠組みでは、デジタルの権利制限を外す、自由にコピーするのは不可能
ぎりぎりのラインで、サービスを提供する以上、貴重な資料については、一旦印刷して提供するようにしている

湯浅/
ここで、会場にいらっしゃる堺市立中央図書館の方にお話を伺いたい

堺市立中央図書館の方/
電子資料は3人まで、アクセスできるようになっている
堺市の所有している資料の電子化と、市販のコンテンツの貸出がある
堺市の所有している資料の制限については、問題があるが、現在提供しているのは市販のコンテンツであることをご理解いただきたい

電子資料の利用については、詳しい数字はないのですが、1月は広報をたくさんしていただいて、その後はジリ貧になっている

湯浅/
次は堺市立中央図書館に電子図書館のシステムを納入しているTRCの方。コンテンツは今後増加しているのか?

TRCの方/
1月に、堺市立中央図書館に電子図書館のサービスを導入した。
導入の段階で1140タイトル、導入した。地域資料のアーカイブ化が課題。
もう一つ、新規のコンテンツの獲得が課題。
大日本印刷が、図書館専用の許諾の獲得に駆けずり回っている。

湯浅/
ネットライブラリーを運営している紀伊国屋の方

紀伊国屋の方/
ネットライブラリーの責任者ではないが…
ネットライブラリーは学術系の情報をオンラインで提供するシステムなので、大学や学術機関
コンテンツは約3000、基本は学術資料を収集している
一般の出版社さんはB to C(個人の利用者向けに)で電子化しており、大学や機関については慎重である
学術系の方は、大学などへの提供に積極的なので、コンテンツを得やすい

井上/
ネットライブラリー、実際の利用がなかなか進まない
他の大学はどうなっているのか?
エルゼビア社が、各大学でどのようにe-bookを利用しているのか発表会を開催している。提供側もどのように使われているか知りたがっている

湯浅/
丸善さんが個人対象で6万2千タイトルイーブックフォアパーソナルユーズシステムを提供し始めたが…

丸善の方/
丸善は電子書籍と現物の図書を両方合わせて、提供できるように動いている
どちらか一方ではなく、総量を大きくする目的で。そのなかで、専門書を中心に提供するシステムを立ち上げたところ

湯浅/
学校や大学で電子書籍がどのように利用されているか?
今まで出版物とみなされていなかった情報もある
利用者の視点にたって、井上さんにコメントを求めたい

井上/
電子書籍っていうのは、誰がどう読んでいるかわかりにくい
自分にとっては、大学で、高いコストがかかっているのになぜあまり使われないか?が悩み
千葉大学で新しい情報源の活性化を狙って活動しているが、まだみんながどう使っているか分からない
慶応義塾大学も、テストされて統計をたっている途中でないか
スキマ時間で電子書籍の利用を促す→京都では利用できない?
それぞれいろんなオプションがある。まだそれがはっきりみえていないのではないか

湯浅/
ぜひ立命館大学の方にもお答えいただきたい

立命館大学の方/
ネットライブラリーに所蔵データを渡して、書誌情報から直接見れるようにしている
英語版から始まり、当初は利用が伸びていなかった
昨年、和書の電子書籍もOPACに導入しており、まだまだこれからという段階
授業での活用も、今現在協働して取り組んでいる最中
大事なところは、先生方がどう活用してくれるか。学生が利用してくれるか

井上/
「図書館に訊け!」の紙媒体の図書は8刷までいってるが、電子書籍は一冊も売れていない
授業で購入するように課してみてもいいかもね。

湯浅/
文化庁の検討会議について、川瀬さん、ここだけの話があれば

川瀬/
これからどういう方向にいくかは分からないが、
検討会議は利害関係者が一同に介して議論するという場所。学術の人ばかりではなく、利害関係者も含めた中で、一つの方向性が出たということは、大いに意味がある。
今後は、合意された内容が尊重され、進んでいくと信じている

湯浅/
新聞記事(配布資料参照)で、日本では国立国会図書館を中心としたコンテンツを、利益を配慮しつつ、いかに提供していくかという段階に来た
長尾構想に伴い、出版産業も再構成していくべきではないか、と申し上げた

長尾構想の問題点(配布資料)で、日本でもグーグルに対抗する必要があある、という考えで長尾構想が出されたと言われているが、間違いである
グーグルが設立される以前から、ハイパーリンクテキスト構想は唱えられていた。
長尾構想は日本出版学会で初めて提唱され、その後、グーグルの和解案が出された。事実誤認がある
電子資料も、勝手に寄越せというわけではなく、DRMを外す手数料なども支払うと言っている。
出版や書店が潰れてもいい、といわれているが、長尾館長は二十数年間一貫して、書店などに配慮していかなければならないと申している
中小の出版企業こそ、長尾構想にいかにのっていくべきか、と議論すべきではないか
(と新聞記事で述べた)

この中に出版、書店の方はいらっしゃいますか?
書店の方から何か、図書館の電子資料の利活用について意見を

書店の方/
私自身は地域の図書館の支援を志している
私が懸念するのは、情報リテラシーの問題
利用者側には、情報リテラシーがない。図書館員全員が、情報リテラシーに強いか?
データや、提供館の問題は、非常に期待している。長尾館長が就任してから、国立国会図書館がみずみずしく、活き活きしている。
ただ、まだ利用者側がついていけていない。
出版側は電子書籍が出てきたら紙の本が売れないのではないかと言われている。
自分はどちらも利用するし、どちらにもメリット・デメリットがある
ぜひ紙の書籍にデータをつけて販売してほしい
出版社や書店の既得権益などを難しく考える必要は、ないと考えている
出版社には高い編集技術があるので、状況が変わっても生き残るだろう
在庫管理が出来ている出版社は実際、少ない。
組織的に、提供する側と提供される側で、使える技術が出てきてくれるといいのではないか

湯浅/
東京都の書店組合が、図書館での電子書籍の利活用に危惧表明されている

出版ニュースの4月のものの記事
電子資料の利活用に疑問を呈する。紙の資料を尊重すべきではないか?
誤解がある。印刷された物を軽視はしていない

井上/
デジタルは自由。自分に合った形で自由に使うことができる
文字の形態素解析も、Kindleにつぎこんで旅行に持って行っても、自由な楽しみがある
小さな端末に積み込めるのは、読みのおぷしょんの一つ

湯浅/
ここで、長尾館長にお話をお聞きしたい

長尾/
アメリカで電子書籍の利用について統計をとったのがカレントアウェアネスに載っている
ただし、一部の大学では紙の本を撤去して電子書籍だけ導入したり、紙のスペースを排除して学生のミーティングができるようにしたりしている
ハーバード大学も電子書籍を導入しているが、まだ教育まで深く入ってきていない。しかし、時間の問題だと思う
電子資料に良いコンテンツが容易出来ていない、安価になっていないことが、利用が普及しないことの要因になっているのではないか
より技術が発展すれば、そういった問題点はなくなるのではないか
今後、良いとか悪いとかいう議論がまだまだ続くだろうが、5年10年先を見据えていくべきではないか

湯浅/
最後に一言ずつ

川瀬/
国立国会図書館や、図書館における情報の伝達の役割は、高い公共性、公益性を有している
そのため、著作権を制限して実施してはどうかという試み
著作権制度については、そういった権利を制限して何かを実施するのは珍しい試み
著作権制度の目的は文化の進行を図ることだが、コンテンツ産業では著作館法は基盤法になっている。様々な産業の
電子出版が今後どのような方向にいくかは、自分には分からない
電子書籍元年といわれて、売上が跳ね上がったわけではない
強調したいのは、権利を制限して、利用の流通を図るのは、個人的には問題がある政策だと思っている
今後、そのようなビジネスをどう推進するのか
利用者側も、権利者側も、安心して利用できる適切なビジネスモデルが、今後構築されるのではないか

大場/
北米の会議で、近代デジタルライブラリーがとても役立っていると言われた
日本の国内だけでなく、世界でどう活用されるかに目を向けないといけない
長尾構想で、電子書籍だけでなく、知識インフラに注目している。ぜひ知識インフラが今後長尾構想と呼ばれるようになってほしい

井上/
近代デジタルライブラリーなどで、大学職員も、学生も非常に知識を得やすくなり、役立っている。さらに全文検索出来れば言うことはない
国立国会図書館は、ここ数年でポリシーが非常にしっかりしてきた。大英博物館も、その辺がしっかりしている
我々も、そういった情報をしっかり活用していきたい
あるから入れる、ではなく、どう活用して、どんな情報が欲しいかということを明確にしていかなければいけない

湯浅/
図書館の館種にかかわらず、どう利活用していくべきか、問われている
この場にいらっしゃるみなさんにも、考えていっていただきたい

  
  

岡本「SaveMLAKについて」

  • 図書館に密接に関わりあう図書館、文書館、博物館、公民館の被災状況を把握し、支援を行う活動を行なっている
  • メーリングリストやWikiなどで活動している
  • 5年、10年かけていかないと解決しない問題
  • 図書館を支援するということを通して、社会に貢献している
  • まず、関心を持っていただいて、ちょっとでも協力していただけたらと思います

  

さいごに

以上でレポートは終了になります。
初めての「図書館総合展フォーラム in 京都」でしたが、会場は満席、申し込みを事前に締め切るなど、大盛況でした。
また、関西という土地柄か、パネルディスカッションの進行がまるで漫談のように、とても面白く、テンポよく進み、楽しかったです。参加者にも手際よく話を振りつつ、会場がどっとわくようなフォーラムは、初めてでした。
記録の都合上、盛り上げる言動を省いてしまい、面白みが伝えられなくて悔しい限りです。。
これも、関西で開催したからなのでしょうか。
当然ですが、会場のそこここから関西弁が聞こえ、関西の方がたくさん参加されていたようでした。
横浜で開催される図書館総合展は遠くて参加できない方もたくさんいらっしゃるでしょうし、違う場所でフォーラムを開催することは、とても良いんじゃないかなと思います。

長尾館長の基調講演は、やはり素晴らしく、考えさせられること、感銘を受けることがたくさんありました。
自分は、館長の「(電子書籍は)今後まだ議論は続くけれど、5年10年先を見据えていくべきではないか」という言葉にはっとさせられました。
確かに、今は話題性は高くても、電子書籍はあいまいち実態がつかめず、良いのか悪いのかも分からず、戸惑うことがあります。
ただ、今はいわゆる「電子書籍元年」であり、登場したばかりの新しい技術に反発があるのは当然でもあります。
5年10年先、今の情報技術が当たりまえになったときにどうなっているのでしょうか?
現実の様々なことに配慮することも必要ですが、ときには想像力を豊かに先を見据えることも大事なのですね。

  
  

参考

・図書館総合展フォーラム2011 in 京都
http://2011.libraryfair.jp/node/6

  
  

(以上文責:アカデミック・リソース・ガイド株式会社インターン 平山陽菜)