実用段階に入った次世代図書館システムProject Next-L

実用段階に入った次世代図書館システムProject Next-L~その概要と研究所図書館における活用事例~

日時:2011年11月11日(金)13:00-14:30
場所:図書館総合展第3会場(アネックスホール203)
主催:Project Next-L
講師:原田隆史(同志社大学 社会学部教育文化学科 准教授)、高久雅生(物質・材料研究機構 企画部門-科学情報室主任エンジニア)
  

構成

  • 原田隆史「Next-L Enjuの現状と将来展望」
  • 高久雅生「物質・材料研究機構におけるNext-L Enjuの採用、導入と今後」
      

記録

当日の映像記録(Ustream)は以下の通り

原田隆史「Next-L Enjuの現状と将来展望」

  • Project Next-L Enjuは図書館に関わる人の力を結集したもの
    • 新しい図書館システムを設計してしまうプロジェクト
  • Amazonのようなオンラインサービスが出てきたことで、図書館がそのようなオンラインサービスに比べ、優れているわけではないと利用者から言われている
  • システムとして図書館を見たとき、図書館は必ずしも手間をかけたデータベースを用意しているわけではない
    • 基本的な作りそのものは難しくない
  • 各図書館で違いを少しでも統一できれば、図書館の業務そのものも近づけていけるのではないかと考えている
    • そこで、システムの仕様を相談して決めていってはどうか
  • 図書館の方々がどのようにしたら納得して頂けるのかを考えてみた
  • 利用者からは図書館は一つのサービスという扱い
    • 図書館というサービスは全く進んでいない、と思われないようにここで話し合っていきたい
  • 自分のシステムの不満な点を教えて頂くことは簡単
  • しかし、自分が使っていないシステムに関しては分からない
    • そこで、仕様をかためていくためにプロトタイプシステムを作ることにした
  • このようなシステムを作っていくツールは沢山出ている
  • 今、my SQLなど各図書館で使われているデータベースはオープンソースとして無償で使えるようになっている
  • どこが間違っているか確認するデバッグというシステムを使っている
    • 確認・修正の部分にものすごく手間暇がかかっている
  • web上で提供する仕組み、図書館システムのみではなく、他のシステムでも実装されているシステムを組み合わせていけば良いのではないか
  • ruby on railsで作られたものがNext-L Enju
    • 実際に図書館で普通に使えるようなシステムが出来た
    • 検索をして実用に耐えるようなスピードも実現できた
  • 様々な図書館システムを組み込むことで、多くのものに対応できるようになった
  • このシステムをプロトタイプとしていて、実際に図書館を運営しても構わないと思っている   

図書館システムとしてのEnju

  • 図書館システムとして必要な基本機能は全て実装している
    • 従来の図書館システムのように違和感なく利用できる
  • 書誌管理、資料管理、利用者管理ができる
    • NDL等からのデータ取り込み、MARCから読み込める
      • 識別子との対応関係が明らかになっていれば容易に実装できる
      • web上にある白書と紙媒体の白書をどのように扱っていけば良いのかに関しても、リンクを貼るなどして対応できるようにしている
      • 図書館システムとして必要な機能も含んでいる
      • つまり若干拡張したシステムを提供している
  • 貸出、返却、予約について
    • カートにいれる方式と呼ぶのが適切
    • 利用者IDが分かればすぐに貸出できてしまうシステム
    • 自動貸出システムにも対応している
    • 図書館員と利用者の求める機能を自由に設定できる
    • web上でOPACを公開する機能も実装している
  • 求めるシステムを広く実装している。
    • 利用者自身に、webに負けてない機能だということを感じてもらいたい
  • 今の利用者は
    • 目新しいサービスには驚かない
    • 検索エンジンと違うインタフェースには驚く
      • 善悪は別として、デファクトスタンダード
  • Enjuの持つ先進性
    • 自由に画面を設計できるシステム構造をしている
      • OPACの検索画面も設計可能に
  • 利用者に便利なことは何でも実装している
    • webページも図書と同様、資料の一部に
    • 国会図書館のレファレンス協同データベースも図書と一緒に検索しても良いと思っている
    • web2.0的サービスはどんどん取り込む
      • ソーシャルタグやタグクラウドなど
      • 色々な使い方が考えられる
  • 他のサービスも取り込むし、連携もする
    • Amazon.comのレビュー、Project Shizukuなど
    • FRBRデータベースにしてみる
      • 新しい書誌に関する記述方法
      • 実験的にこのようなサービスをしている、という段階に止まっている
      • どこまで利用者/図書館員に意識させずに使えるかが問題
           

Enjuの導入館

  • データベースを入れ替えて、現在7,000万件のデータを扱っている
  • 試して頂き、そのフィードバックを行って頂いている
    • 便利だと言われた仕組みはどんどん組み込んでいく
    • 便利でないと言われたシステムの場合、どのようなものが良いか検討してもらう
    • オープンソースは、基となるプログラムを全て公開し、使ってはいけない人を設けない
      • Enjuは無償で公開している
    • それより誰でもつかっても構わない、という意味の方が大きい
    • 9月から南三陸町の図書館にも無償提供している
    • 寄付された図書を入力する作業を行っている
  • 手作業で書誌データを登録しなくてもAmazonから無償でデータを取り込むことができるようになっている   
       

高久雅生「物質・材料研究機構におけるNext-L Enjuの採用、導入と今後」

  • どのように導入されたかを話していく
  • 物質・材料研究機構の紹介
    • つくばにある
      • つくば市内に3都市ある
      • 図書室の規模は非常に小さい
  • 物質・材料研究機構は
    • 金属の研究、鉄鋼材、セラミックス、ガラス、超伝導などの研究が盛んに行われている
      • 500人の研究員を抱えている
  • 科学情報室は三つの柱で構成
    • 専門図書室を運営
    • webポータルサイトの運営もしている
    • オープンアクセス学術雑誌を発行
  • 独法の抱える大きな問題
    • 運営費が年々減少している
  • 図書室の運営資金が年々減額されている
  • 職員の国籍の問題
    • 外国人研究員が多くなっている(2割強)
      • webサービスを行う上で、日本語だけでは十分だといえない
  • 図書室のサービス
    • 物質・材料分野の専門書や専門雑誌を用意
    • 理工系の最新の研究分野はほとんどeジャーナル、eブックに移行している
    • つくばに3拠点ある
      • 各2万冊程度で小規模
  • 図書室の担当スタッフは3名
    • 業務のうち、貸出返却はセルフサービスを使って合理化
  • 電子リソースが大きな課題
    • 論文データ、比較的大きめなデータベースを用意して研究環境を整える
    • これが導入に至るバックグラウンド    

総合図書システム Next-L Enju

  • 導入経緯
    • 2001年の独法化以降、旧来の商用図書システムを更新
  • 国内初、研究機関でオープンソース図書館システムを採用した
    • 電子資料、紙資料の双方に対応した資料情報の提供が重要となっているバックグラウンド
    • 商用システムのサービスの質を落とさずにコストダウンを目指している
  • 図書システムをデジタルライブラリーのポータル〔窓口〕として活用
  • 検索系サイト、論文のデータベースを並べている
    • 右にリンクがまとまっている
    • 新着資料のところに「おすすめ」機能を追加している
    • まとめて検索できるようにする窓も用意している
    • ソフトウェアのリンク集も提供している
  • 検索性能が優れていると考えている
  • どの図書館に所蔵しているのか通常のOPACのように分かるようになっている    

書影表示とプレビュー

  • Google Booksを対象としている
  • 貸出履歴
    • これまでの貸出情報を全て記録する
    • 利用者独自のマイライブラリーという機能にもなっている
  • 図書室はほぼ無人、セルフ用の端末を用意して、職員端末と連携して管理出来るようなシステムを導入した
    • スキャンをすると貸出を実行できるようになっている
  • Next Enjuはオープンソース
    • 新しく追加された機能はオープンソースに返していくことが必要
    • 定期刊行物に上手く対応できたと考えている
      • NIMSでの運用によって多くのニーズを捉えることができている
  • 二つの機能を開発している
    • Eリソース管理
      • 今年末には運用開始をしたい
    • 機関リポジトリとの連携
      • 論文情報も含めて検索できるようにしようと考えている
  • 日常業務をやっていくと構想段階では想像していなかったようなワークフローが表れる
    • 開発ツール上でバグや不具合を報告してもらうような仕組みも組み込んでいる
      • たとえば、問題が起こっていることに関して開発者とやりとりできるページを用意している
           

まとめ

  • Enjuを導入してみてどうだったか
    • 非常に多機能
      • 設定、表示の使いかたを工夫すれば色々使える
      • データベース、システムをつなぐ構成が比較的複雑
    • Enjuの運用をどうするかが重要
    • Enju運用のプロが少なく、経験値を上げていく必要がある
  • オープンソースソフトウェアの拡張性を活かした柔軟なカスタマイズと開発
    • 自分たちで考えた図書システムを     
         

原田隆史「Next-L Enjuの現状と将来展望」

  • 導入された事例が既に公開されている
  • モジュール化する構想も持っている
  • 現在、物材機構に導入していただいている形態はプロジェクトそのもの
    • 全てが同様に導入されているとは限らない
    • ソースコードをみて改変して使っているところもある
      • いずれにしてもプロジェクトが直接関わっているわけではない。
  • 関係のない民間企業がソースコードをダウンロードして商売をしていく、という新しいビジネスが生まれているところも面白い
  • 日本全体の図書館が良くなっていくことに貢献していければ良いと思っている
  • Enjuはwebブラウザのみが合っていれば操作できる非常に相性が良いシステムになっている
    • 現実に南三陸町図書館では、プロジェクトが用意したherokuクラウド環境で動作
  • 利用者の本データだけを管理するシステムだけを切り出してそれをクラウド上において、必要なときだけ読み込むシステムを作ったり
  • 本システムの方で自動的で吸い上げる機能について検討し、実装していく段階にある
  • 現在ソースコードのみを公開している
    • 誰でもインストールすることができる
    • 様々なところでバグレポートが届いているが、エラーに関するレポートのみではなく、良くするための要望も多く含まれている
      • 多くの人々から要望を聞けばよりよいシステムになっていく
  • 個人ベースでも図書の管理をしたいと考えている人もいると思う
    • ソースコードと同時にEnju仮想マシンも提供している
    • 環境を復元して使うことができるようにもなっている
      • インストールマニュアルは全29ページ、数時間あればインストールできる
  • 本日Next-L Enju バージョン1.00のリリースをしました
    • Enju Leaf+Enju Flowerの統合版
    • インストールマニュアルも近日中に公開予定
  • 次期バージョンのEnju
    • 業務処理機能と資料管理機能の分離をしている
      • 図書館業務機能、資料の属性等の管理
      • 複数の図書館が協力して新しいサービスを提供する
  • 基本的な仕組みは全てモジュール化している
    • Enju Circulation、Enju Reference、Enju Purchase_Request、Enju MARK、Enju NDL、 Enju Cross_Retrievalなど
      • 取捨選定して、自分の図書館に適したものにしてもらえるようになっている
  • Project Next-Lの現状と今後
    • プロトタイプシステム作成のための開発面での問題は多くはない
    • 国立国会図書館の情報探索システムのコアシステムに
    • システムの高速化やセキュリティ面での強化もOK
    • コミュニティをどのように構築・維持していくかが重要
    • 継続のために、10年後もサポートできる体制を構築
    • オープンシステムというライセンス形態への不安を解消する
    • 利用者教育も課題と考えている
        
        

会場からの質疑応答

会場/連携は別のシステムとの連携なのか、どのシステムとの連携なのか?

高久/Enju内で新しい機能が蓄積されていくと考えている
Enju上で展開されるので、どれだけ一体にするかが分かり辛いかもしれない

会場/導入の際に、特にハードウェアは技術者に任せるなど、分担はスムーズにいったのか?

高久/ハードは自前のものを使っている

会場/小規模ならすぐ導入できそうだが規模が大きくなると導入は難しいのでは?

原田/同じような機能が二カ所から出てきて、ほんの少し違うということもある
それより大きな管理上の問題はあまり起こらないと考えている
大きくなっていくと切り分けが必要になってくるとは考えている
早くそのような対応はしていきたい

会場/図書館に導入していくにあたり、どのようなところから引きがあるのか、
どのような課題があり、どのような改善点があると考えるか?

原田/Nacsis-catときちんと連携するという点、
コストがかかる問題なので要望が早くこないかと待っている

誰でもインストールできるので是非試して欲しい
   
   

フォーラムを聞いた感想

私自身、このEnjuをインストールして、少しではありますが使用したことがあります。書誌情報を逐一登録せずともAmazonなどの他のオンラインサービスと連携することで、効率よく書誌情報をインポートできるところが非常に便利であり魅力的だと思いました。今後このような有用なシステムがより多く開発され、オープンソースとして一般公開することで、更にそのシステムが洗練されていけば、と考えています。公開されたシステムが洗練されていき、図書館側にとっても利用者にとってもより使いやすいシステムへと改善されていくことで、図書館サービスは他のサービスにひけをとらないものになっていくのではと思っています。
  
  

(執筆:梶浦美咲)