図書館政策フォーラム「電子書籍時代の図書館‐次世代の文化創造に向けて」【第1部】

図書館政策フォーラム「電子書籍時代の図書館‐次世代の文化創造に向けて」【第1部】

(以下敬称略)
   
日時:2011年11月10日(木)10:30-12:00
場所:第13回図書館総合展第9会場
講師:長尾真(国立国会図書館長)、田中久徳(国立国会図書館・電子情報企画課長)、山中弘美(文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室長)
総合司会:湯浅俊彦(立命館大学文学部准教授)
  

本日の進行

  • 「電子書籍の利活用と新たな文化創造‐”情報”図書館学の視座(ビデオ出演)」長尾真(国立国会図書館長)
  • 「電子書籍の利活用と国立国会図書館」田中久徳(国立国会図書館・電子情報企画課長)
  • 「電子書籍の円滑な流通と利用に関する検討会議について」山中弘美(文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室長
      

関連資料

運営委員長挨拶

  • 今日のフォーラムは一日構成
    • 600席を用意しているが、ほぼ満席になってしまう。大盛況
  • 昨年は電子書籍元年といい、三省懇も行われた。またGoogle Booksの上陸、iPadが話題になった
  • アメリカに行った時も、10人に1人はKindleで電子書籍を読んでいた
  • 昨年は三省懇を受けてのフォーラムを開催した。今年は一日構成で行う。午後にはNHKや読売新聞など取材を行う
  • 一方、3月には東日本大震災がおこり、「書物も瓦礫になるのだ」(福島在住の詩人・和合亮一)との言葉もありました
    • 我々は震災の際にどのような対応をしていくのか。震災を受けてMLA連携を進めようという話もあった
  • 図書館総合展ではそのような議論を深めていきたい
  • ぜひ会場の皆さんにもご発言をいただきたい
  • 休憩時間の際には、ぜひ展示ホールに足を運んで情報を得ていただければ幸いである
       

「電子書籍の利活用と新たな文化創造‐”情報”図書館学の視座(ビデオ出演)」長尾真(国立国会図書館長)

情報図書館学とは何か?

  • 従来の図書館情報学。図書館を情報化していく
    • これからは情報図書館学へ。情報を図書館の観点から組織化し、提供していく
    • 扱うのはデジタル情報、音声、音楽、あらゆるマルチメディアのものがある
  • そういうのを上手くマルチメディア化して、統合していく技術が必要ではないか
    • 電子書籍の他にも様々なものを含んでいかなければならない
  • 情報世界をいかに把握していくか、ということが中心になってくる
    • そういうことを、図書館分野の人にはがんばっていただきたい
        

電子出版と図書館のかかわり

  • 人間の頭には様々な情報が詰まっている
    • 人間の知識構造に似た形で情報をオーガナイズする必要がある
    • それが情報図書館学。図書館情報学は情報図書館学の一部
  • 図書館の構造、図書館学の教育などを根本的に変えていく必要があるのでは
  • 電子化は避けられない
    • もちろん紙の良さは残るが…
    • 電子書籍は様々なメリットがある。コストも安いので、電子化は避けられない
  • 公共図書館は難しい問題を抱えている
    • 国会図書館もだが、財政難がある
    • その中で、電子書籍に転向していくことができるのか
  • 利用者一人ひとりが様々な情報検索を行う
    • いろんな検索をしても、何でも出てきてしまう
    • 自分にとって必要な情報は何か、大事な情報は何か、ということはなかなか分からない
    • そこで図書館司書のアドバイスが重要になってくる
  • 検索した情報が信頼に足るものなのかどうかを、それぞれの公共図書館の人たちが判断してくれる
  • そこに重要性が生まれるのでは
  • 大学図書館や専門分野の方は、地域の資料を集める
  • もう一つ、教育が重要
    • どうしたら、それぞれの学生が必要とする情報を捉えられるのか
    • そういった教育を大学図書館の人が積極的に行う必要がある
  • 学校図書館の場合、書物に親しませるのが重要
  • 今は文部科学省もデジタル教科書に手をつけつつある
    • 教科書だけでなく、様々なメディアをそろえられるか。電子的なメディアもある
    • データベース化されて、日本中で共通で使われる
  • そういうものを学校図書館が提供していければ
      

国立国会図書館における今後の展開について

  • 一番大事なのは出版活動を記録し、保存していくこと
    • 電子書籍の収集がまだできていない。これをなんとか、体系的に集められるようにしたい
    • 法律をつくることができれは
  • ぜひ協力していただきたい
  • もう一つは、これからの情報ネットワークの世界で、人類の知的資産を、どこにいても、誰でもきちんとアクセスできる、そういう環境を作っていきたい
  • 総合性を高めるためには、環境を整える
    • 一つの資料を読んでいて得た情報を、他のもので調べる。いろんな本を使って調べたいときは、紙の本だと難しかった
    • 電子図書館ならそれが楽にできる。思いついたらぱっととりだされるので、自分の空想力、イマジネーションを働かせながら自由に読むことができる
  • 電子図書館のストラクチャーは人間の知識構造に近いのではないか
  • いろんな過去の出版物を電子化し、すべての著作物が相互関連性を持って組織化される
    • 現在の言語処理技術を使えば、必ずできると思う
    • この先10年、15年たたずに、実現するのではないか
        

インタビュー映像を見て(湯浅)

  • 研究に携わられてきた長尾館長らしいお話であった
  • 今日の話は次世代の文化創造に向けて、この会場の中で考えていきたい
  • 次は田中久徳さんに、電子図書館の利活用と国会図書館というテーマでお話いただく
      

「電子書籍の利活用と国立国会図書館」田中久徳(国立国会図書館・電子情報企画課長)

はじめに

  • 本来でしたら長尾館長が来るところでしたが、中国からの来賓のため、今回は館長の代わりに国立国会図書館の取り組みについてご紹介する
  • この10月に国立国会図書館の機構がかわり、電子情報部をつくった
  • 今日お話するのは2つ
    • 国立国会図書館が蓄積している過去の出版物のデジタル化への取り組み
    • オンライン流通しているデジタル出版物にたいしてどのように対応をとるか
         

国立国会図書館の取り組み

  • 十数年前から国立国会図書館でも電子図書館のに対する取り組みというのは細々と続いていた
  • ここ数年の動き
    • 大規模に資料をスキャニングして利活用する
    • 既存の枠組みとどう連携するかということに議論の焦点が移ってきた
  • 平成21年、22年に大規模な補正予算が組まれ、スキャニングを行なってきた
    • 電子図書館サービスとして、スキャニングした資料をインターネットで利用できるように
    • 権利が残っていないものに対しては自由に利用できるように
    • 権利がある商業的なものについては、調整が必要。原本を保存するというためにデータは作る
    • * データは館内で利用、原本は利用しない形で
  • 平成21年の補正予算が多額で、これによって資料の電子化を進めた
    • 江戸期の資料、単行本などの図書資料
    • 権利を調べながら、大丈夫なら公開する→近代デジタルライブラリー
    • 戦後期資料など、古いものからデジタル化を推進
    • 現在で5分の1ほど終了している
        

保存の方法

  • 蔵書は痛むので、マイクロ撮影を昔から行なっていた
    • マイクロ撮影を既に行なっているものについては、マイクロ資料からデジタル化を行う
    • 行ったいないものは原資料からスキャニング
  • 大規模デジタル化の基本仕様
    • 400dpi;この解像度にしたのは、将来OCR化した際にぎりぎり読み取れる程度、ということ
    • 本文は画像化してスキャニングしている
    • * 目次については別途入力し、それをキーに検索できるようにしてる
  • 保存の方法
    • 館内のアーカイブシステムに閲覧用のものを入れる
    • 保存用の精度の高いものは保存用のメディアに移す
  • 複製
    • 法改正が行われ、複製はできるようになったが、送信は許諾がなければできない
    • 戦前のもので許諾をいただけたものはインターネット利用を想定
    • 戦後のものは館内でみていただくようにする
  • 原本は痛むので、何らかの形でデジタル化をする必要がある
    • フィルムは保存状態が良ければ、長く持つと言われている
    • 原本はできるだけ良い状態で保管し、長く持つようにする
  • 平成21年に著作権法が改正
    • 改正以前は原本が損傷した場合のみであった
    • 改正後は劣化前、良い状態の頃から残すことができるように
        

長尾ビジョン

  • 長尾館長が就任してから、理念的な目標を公開している
  • 「日本の知的活動の所産を網羅的に収集し、国民の共有資源として保存します。」
  • 利用者がどこにいても、知的情報へのアクセスを保証する
    • これを国立国会図書館がそのまま実現するわけではない
    • 網羅的に実施するわけではない
    • これはひとつの有り様、モデルである
    • 現実と噛みあわあない点もあるので、上手く折り合いをつけて進める必要がある
  • 信頼と連携の関係を構築する
    • アーカイブスの公的な側面と、商業的な側面を上手くつなげる
         

アーカイブスの仕組み

  • 近代デジタルライブラリー
    • 戦前期までの資料なら、既にかなりの部分がインターネットで利用できるようになっている
  • 戦後期は館内においで頂ければご覧いただける
    • 館内に来れば、原本も見ることもできるが、デジタル化により原本が見れなくなる
    • 逆に不便になったと思われるかもしれない。しかし原本はいつか壊れてしまう
  • 一定のルールのもとで、もう少し広い範囲で利用できるようにならないだろうか
    • 権利者の皆様に不利益にならないよう、今後の出版活動に師匠を与えないようにすることが課題
  • 館内利用も一定の枠組みを設けている
    • 利害関係者の方と協議を行った
  • 利用条件;1冊の本は、同時に1人までしか利用できない
  • デジタル化は画像のみ
    • OCR化すればテキスト検索ができるが、当面見送っている
    • 1つは費用の問題
    • もう1つは商業活動に対する影響を考慮
    • * テキスト化することにより、必要部分しかコピーされないようになてしまうのではないか
        

今後の方向性

  • 私どもの目標
    • 持っている資料を、どれだく多く、国民の皆様に利用して頂くか
  • 当面考えられる方向性
    • 現在の利用条件(館内)から、アクセスできる場所を広げられないか
    • * 例えば、大学図書館からならアクセスできるなど
    • * 図書館という施設の中から見ることが出来れば、より多くの国民の皆様に利用を保証できる
    • 画像データのテキスト化
    • * 検索だけでなく、障がい者の方へのサービスにつながる
  • 利害関係者の方との合意調整が必須
  • 国の予算、政策の結果が、どのように皆様に反映されるか
      
  • 文化庁でも三省懇などで検討が進む
    • この中で、他の図書館での利用については、認めてもいいのではという方向性が出てきている
          

オンライン資料の制度的収集に向けた検討

  • 全文テキスト化実証実験
    • 2万冊の規模でテキスト化がどれだけ可能か実験を行なっている
    • どれだけ費用をかけずにテキスト化を行うことが出来るか
    • * 障がい者サービス及び検索の利便性のために
         
  • 民間のオンライン資料を対象とする制度的収集
  • 答申「オンライン資料の収集に関する制度の在り方について」(2010年)
    • オンライン資料について、紙のものがあっても、また有償・無償でも、納本していただくか、国立国会図書館がプログラムが自動的に集めて、館内で保管・閲覧するということを想定
  • ウェブサイトの収集も行なっているが、これは電子雑誌に限定したもの
      

制度案検討にあたっての主な論点

  • 現在の状態も非常に流動的
  • 様々な問題点がある
    • DRM
    • 権利問題など
        
        

「電子書籍の円滑な流通と利用に関する検討会議について」山中弘美(文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室長

 

三省デジ懇の報告書

  • 検討の途中であるが一定の方向性について
  • 文科省が取り組むべき姿勢が示された
    • デジタル出版物の流通による知の拡大生産をはかること
    • 著作物、出版物の権利処理への対応
    • 出版社への権利付与への検討。出版社の機能維持、発展の検討
    • デジタルネットワーク時代の国立国会図書館との公共サービスの在り方の整理
    • 関係者間で合意を得られたものから実施
        

電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議

  • 検討のまとめ(2011年9月)
  • 早期に実現するべき課題と、中長期的に検討する課題を整理
  • パブリックコメントは集計中
    • その結果を踏まえて年内くらいに最終的な報告書をまとめたい
    • その途中結果について報告する
  • 地の拡大再生産の実現を前提として、広く国民が知にアクセス数する環境を整える必要がある
  • 図書館と民間の役割を分担した上で、取り組む
  • 国立国会図書館が担うべき役割
    • 納本された紙媒体の資料のデジタル化による利活用
    • 現状は画像ファイルであるが、この画像ファイルを用いたサービスを行う
  • 送信サービスの実施については、デジタル資料の利活用の一環として、一定の条件の元に行う
    • 権利を不当に害さない、将来のあるべき姿を見据えた上で
    • 戦略的な取り組みが重要
    • 家庭への送信には、課題が多く実施には相当の時間を要する
    • 家庭への送信を目標としつつ、公共の図書館への送信を目指す必要がある
    • 公共図書館は無料で利用できること、などから妥当ではないか
    • 送信先へのプリントアウト、無制限の複製物作成は当面の間認めないでおくべき
  • 対象出版物
    • 相当期間重版されていない
    • 電子書籍として流通していない
    • * 一般的に市場での入手が困難なもの
  • こういった考え方を整理した上で検討する必要がある
  • まとめ
    • すべての国民が等しく利用できることが重要
    • 障がい者へのサービスについても、配慮されることが望ましい
    • 他の出版物への興味関心を喚起することになり、新たな市場の活性化につながるのでは
    • オプトアウト導入
    • 電子書籍市場活性化の狙い
    • 関係者の合意が望まれる

国立国会図書館のデジタル化資料検索について

  • デジタル資料を検索するにはテキスト化する必要がある
    • この行為は著作権法上どう解釈されるか?
    • 慎重に検討する必要がる
  • 書誌事項について
    • 検索された結果の語の表示か、スニペット表示か
    • 関係者間の協議が必要
  • デジタル化資料の民間事業者への提供
    • 著作者の許諾を必要としつつ、データを提供することは重要であると考える
    • 提供についての適切な仕組みづくりを行い、実施すべき
  • デジタル化資料を活用した新たなビジネスモデルの開発が必要
      

公共図書館の役割の検討の結果

  • 公共図書館サービスとの調和が取れるように、デジタル情報を提供すべき
  • 公共図書館は社会教育機関であり、情報へのアクセシビリティの向上を目指す
  • 民間企業との契約に基づいた電子書籍サービスも実施されている
    • このようなサービスは、公共図書館の役割を考えつつ、各館の判断に委ねられるべき
  • 地域の実情に応じてサービスを構築する
    • 地域での利活用は電子書籍市場の形成と補完的に行われる
  • 関係者感の協議、促進の場を文化庁が設ける
  • 文化庁の来年度予算要求として、著作権処理に関する研究の予算を想定している

       

(執筆:平山陽菜)