図書館政策フォーラム「東日本大震災からの復興と震災への備えに向けて」【第3部】

図書館政策フォーラム「東日本大震災からの復興と震災への備えに向けて」【第3部】「非常時からの復興、そして平時の備え」

  
日時:2011年11月9日 15:30~17:30
場所:図書館総合展第9会場
主催:図書館総合展運営委員会
総合司会:岡本真さん(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)
講師:萬谷宏之さん(文部科学省)、白石牧子さん(総務省情報流通振興課)、稲葉洋子さん(神戸大学附属図書館)、新出さん(白河市立図書館)、西野一夫さん(日本図書館協会)、江草由佳さん(saveMLAK),
菊池和人さん(岩手県立図書館)、熊谷慎一郎さん(宮城県図書館)、吉田和紀さん(福島県立図書館 企画管理部)
  

第3部の構成

  • はじめに:司会による趣旨説明
  • 東日本大震災における図書館の被害状況と文部科学省の対応について / 文部科学省生涯学習政策局 社会教育課企画官 萬谷宏之さん
  • 政策課題としての図書館支援~総務省の取り組みから / 白石 牧子さん 総務省情報流通振興課
  • 神戸大学「震災文庫」が伝えてきたもの 1995年年1月17日から今日まで / 神戸大学附属図書館 稲葉洋子さん
  • パネル討論
  • 司会による総括    

その他の記録

    

はじめに 司会:岡本真さん(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)

  • 次に起こりうるであろう大震災に対して、何をすべきか、合意、提言することまでを目指したいと考えている
  • 3月11日以降、この種のイベントは多々行われてきたが、単なる報告会として終わってしまうことが多かった
  • せっかくこれだけの人が集まり、被災地から職員の方を呼んでお話いただいたのだから、共通理解や枠組みを作るところまでをこのフォーラムの目標としたい
  • 第1部のまとめ(第1部参照)
  • 第2部のまとめ(第2部参照)   
       

東日本大震災における図書館の被害状況と文部科学省の対応について / 文部科学省生涯学習政策局 社会教育課企画官 萬谷宏之さん

  

自己紹介

  • 社会教育施設といわれるものを担当してる(博物館、図書館など)
  • 東日本大震災における社会教育施設の被害状況
    • 物的被害が3397件中、公立社会教育施設が1784件。公民館が894件で図書館は251件
        

公立社会教育施設の災害復旧に関する国の支援

  • 補正予算によって、公立社会教育施設災害復旧費補助金を出している
    • 施設の復旧および設備の復旧が補助の対象
    • 今回震災は被害が大きく、補助金が大きいため、手続きの簡素化を進めているところである
  • 子供の学び支援ポータルサイトについて
    • 被災地の支援のニーズと支援者をマッチングさせる仕組み
    • 被災児童・生徒などが必要な支援を受けやすくするため、被災者のニーズと提供可能な支援を相互に一覧にできるポータルサイトを開設
    • 支援が欲しい団体(被災地の都道府県・市町村)がポータルサイトに支援の要請を書き込み、支援をしたい団体(教育委員会、大学、企業等)は支援の提案を書き込む
    • 相互に閲覧・連絡し情報を共有できる
  • 図書館におけるリスクマネジメントガイドブック
    • 図書館が様々なトラブルや災害に対する適切な対処方針を策定し、図書館関係者による協力体制を構築する
          

政策課題としての図書館支援~総務省の取り組みから / 白石 牧子さん(総務省情報流通振興課)

  

なぜ総務省と図書館に関係があるのか

  • 知的財産のデジタルと化を勧め、インターネット上で電子情報として共有・利用できるようにする
    • 電子書籍、デジタルアーカイブ、MLA連携など
  • デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会
  • 役割:総務省、文部科学省、経済産業省の副大臣・大臣政務官による共同懇談会として、作家、出版社、新聞社、印刷会社、書店等の代表を集めた
  • 懇談会報告:具体的な政策の方向性とアクションプラン
    • オープン型電子出版環境の整備
    • 検索技術の確立
    • 著作権処理の円滑化
    • 図書館と出版社のあり方
       
  • 東日本大震災アーカイブ基盤構築プロジェクト
    • 東日本大震災からの復興の基本方針を策定し、復興施策の計画を立てる
    • 内容
      • 国立国会図書館などと連携し、東日本大震災に関する記録デジタルデータにより収集・保存・公開するためのルールを定める
      • ネット上に分散して存在する東日本大震災に関するデジタルデータを一元的に検索・活用できるソフトウェアを開発する
    • こういった取り組みを被災地の人にもすすめ、次世代の人にも継承してくことが必要
         

神戸大学「震災文庫」が伝えてきたもの 1995年年1月17日から今日まで / 神戸大学附属図書館 稲葉洋子さん

震災文庫とは

  • 1,995年1月17日兵庫南部地震が発生
  • 被害の状況を「震災文庫」デジタルギャラリーで写真を見ることで追体験できる 
    • 震災直後の神戸市の様子、倒壊した効果、火災の様子、公園に避難している人たち
    • 避難所の様子、図書館の倒れた書架、棚から落ちた本などの写真
  • 阪神・淡路大震災の関係資料の収集
    • 震災資料収集グループの結成が相次いだ
  • 神戸大学附属図書館での資料収集を1995年4月に開始
    • 資料を収集するむずかしさ
      • 網羅的に収集することを方針とし、寄贈依頼、自分の足で集める、マスコミに報道依頼など
    • 収集速報の発信
      • インターネットなどを使い、データで即配信することを目指した
  • 震災文庫の独自の分類法―分類しやすく、わかりやすく
  • 一般公開に合わせて、こちらからニュースを流して取材に来てもらっていた
    • 震災資料の保存について、震災から3年くらいたってようやく取材に来るようになった
    • 文部科学省から電子図書館の予算がついたので、資料のデジタル化をし始めた
  • 1998年9月一枚ものの資料のデジタル化を開始
  • 1999年7月図書館職員手作りシステムから電子図書館システムへ
  • 利用希望者と著作権との仲介
    • 保険会社のセミナー、県市町村防災・耐震講演会などに資料を提供し、展示会などを実施している  

これからの課題

  • 震災文庫2度目のリニューアルオープン
  • 資料収集のサポートを実施
  • 音声、静止画、動画などの保存
  • 東日本大震災を支援
    • 震災文庫の広報活動は頑張ってきたつもりだが、関東の人にはあまり知られていなった
    • 今後もっと震災文庫を活用してもらいたい
         

パネル討論

  • 新さん(白河市立図書館)
    • いまある仮設図書館などのプレハブは、民間から提供を受けているもの。復旧や補助について今後どうするのか考えなければならない。
       
  • 萬谷さん(文部科学省)
    • 被害状況の写真をとってもらえたりすれば対応できる。こちらも、被災者の方も初めての経験で戸惑っているところがあると思う。
    • 本来予算は単年度主義ではあるが、今回の震災に関しては、これからよく検討していきたい
       
  • 白石さん(総務省)
    • デジタル化を地方で進めるのは大変だという事はこちらもよくわかっている
    • 既に先進的な取り組みを行っている民間団体などと協力して、地方に負担のかからない形でデジタル化を進めて行きたいと思う
       
  • 司会:岡本さん(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)
    • デジタルアーカイブに偏っているのが気になる
    • 神戸に保存されていた「阪神淡路大震災のときに東北の人から送られた色紙」など、現物が力を持つことが多々あると思う
    • 現物のアーカイブに関して総務省がどう思っているのかおうかがいしたい
       
  • 白石さん(総務省)
    • 司、記憶を残していくことが大前提として、デジタルアーカイブに取り組んでいる
    • 被災した人たちも一緒に、どのようにして残していくか考えていくことが必要かなと思っている
       
  • 熊谷さん(宮城県図書館)
    • 現物がないのにデジタル化しよう、震災文庫を作ろう、という動きに疑問を感じる
    • 非図書資料(チラシなど)をどうやって収集してどうやって保存しようと考えているところに「デジタル」という言葉が出てくるのに違和感
    • デジタル化をやる時期をいつにするのか、考える必要があるのではないか
       
  • 新さん(白河市立図書館)
    • 図書館も相当な被害を受けたところは、ちゃんとした図書館をつくるには10年くらいかかると思っている
    • 思い切って補助金を導入していく必要があるのではないか
    • 陸前高田の吉田古文書に関しては民間からの支援がありとてもいい感じに進んでいる
    • 良いネットワークが生まれ支援が進んでいるということは一種のモデルケースになるのではないかと考えている
    • そのこと国は考慮し、丁寧に支援を行っていく必要があるのではないか
       
  • 司会:岡本さん(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)
    • 政策としてやるということと、民間でやることは別問題
    • ある分野を活性化するために国の援助を受けずに、民間の力だけでやることも出来る
    • 民間のボランティアな活動を活かしつつ国の補助金を投入すればよいか考えなければならない
        

政策として解決すべき課題

  • 司会:岡本さん(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)
    • 自治体間の中長期職員派遣の実施について
      • 図書館同士で協定のようなものを結んだりして、そこの図書館に対する支援を行うことが出来ないのはなぜか
         
  • 江草さん(saveMLAK)
    • 自治体間であれば、細かいレベルで職員を派遣することが可能である。しかし、図書館ではそれをやってこなかった
    • 命に関わったり、病院や道路の復旧など重要なことは迅速に解決できるように法律で定められている
    • 文化に関わることは、超法規的に解決できるように法律はなっていない(見積もりを出したり、入札をしたり、通常の法律通り手順を踏まなければならない)
    • 協定を結ぶときに、図書館をいれなくても良いのでは?と思われてしまっていることから、図書館は協定に入れてもらえなかっただけらしい
  • 吉田さん(福島県立図書館)
    • 図書館に今正規職員がどのくらいいるか?
      • バイトの人を他の自治体に派遣することはできない
    • 図書館が図書館長の判断でなにかするというのは難しいことだと思う
  • 司会:岡本さん(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)
    • 図書館だけのローカルな協定を結ぶというより、公務員間で協定を結ぶことになる
    • 必ずしも人が生きるのに必要なサービス(水道など)だけじゃなく、行政サービス(税金・戸籍の処理)を行うのも自治体の急務に含まれている
    • 自治体間の協定ベースにどうやって図書館を組み込むか
      • 成功している自治体をボトムアップさせる
      • 防災課の人と話をし現状を確認してみる
      • 政策的なアピールをしていく
    • 対口支援関係を組み込むよう提言してみてはどうか
       
  • 萬谷さん(文部科学省)
    • 専門職を持った人でないと、派遣されてもかえって足でまとになってしまうという懸念もある
    • 専門的な能力を持った人の団体を作りネットワークがあれば、職員間の派遣も可能ではないかと思う
       
  • 司会:岡本さん(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)
    • 制度的に「こういうものがあればいい」みたいなものはなにかあるか
       
  • 菊池さん(岩手県立図書館)
    • 岩手県立図書館長は市町村の図書館に対して何か出来るものではない
    • なにか県内の図書館で行うときに、県立図書館ではなく協会の名前を使うしかないという現状がある。県立図書館長にもう少しまとめる力があればよいなと思う
       
  • 司会:岡本さん(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)
    • 図書館の責任者という意味では、それぞれの図書館は独立していなければならない。あくまで協力関係
    • しかし、このような事態を考えると、一定程度の権力の規定はあったほうが良いのではないかと思う
    • どういう情報が一元的に流れるか決まっていない時点で、情報収集でもかなり遅れをとる
    • 平時は独立関係だが、有事においては県立図書館長になんらかの権限を与えることは出来ないだろうか
       
  • 新さん(白河市立図書館)
    • 結局人間関係が出来てないと、表面上で情報は出てきても、本当の声なき声は出てこないと思う
    • 制度だけ作っても、情報的にそんなに得るものがあるだろうかということは疑問である
       
  • 司会:岡本さん(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)
    • 権限とまでいえるかわからないが、県立図書館の職員が県内の市町村図書館の支援を行うことが正当な業務であると認識されるような制度を担保することが必要ではないか
    • 日本には図書館法はあるが図書館基本法はないのが大きく影響しているのではないかと思う
    • 今回のようなケースを通して、各図書館の関係性を見直すことで図書館基本法の制定に繋がっていくのではないか
    • 地域史資料のデジタル化について
      • 確実に地域資料のデジタル化は進んでいる
      • 片山前総務大臣が去られたが、デジタル化に関して政策の変更はないのか
         
  • 白石さん(総務省)
    • ないと思います。安心していただけたでしょうか(笑)
       
  • 司会:岡本さん(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)
    • なにが本当に残すべき資料なのか本当に図書館が判断できるのか、ということが問われるのではないか
    • なにを残して記憶を継承していくべきか
      • 被災地において何が必要が、求められていることはなんでしょうか
         
  • 熊谷さん(宮城県図書館)
    • 集めても、なにを公開し何を活用すればよいのか。正直ちょっとよくわからない
    • 集めようにも、集まるような仕組みや制度が確立されていない
      • 資料を取りに行くという覚悟を持って行うことが出来るか、わからない。みんな悩んでいるのではないか
         
  • 菊池さん(岩手県立図書館)
    • 岩手県立図書館は最近始めた
    • 図書資料の他に雑誌も収集している。今年は予算ついたが、来年も継続して購入していけるほど予算が付くかはわからない
    • そういうところが保証されると、安心してアーカイブすることも出来ると思う
       
  • 司会:岡本さん(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)
    • なにを残すべきか、といいうことで被災地3県の図書館は悩んでいる。震災文庫はどうだったか
       
  • 稲葉さん(神戸大学附属図書館)
    • 災害のアーカイブである以上、次の災害の減災に貢献する、という思いを持って取り組まなければならない
    • 図書や雑誌だけでは、震災から復興までの記録を残せないと思ったから、網羅的に収集しはじめた
    • 「震災文庫に行けば、震災に関する情報は全てある」というくらいにならなければならない
    • 「岩手県内の震災に関する情報はすべて集まる」という目的を持って収集すればよい
      • 図書館で待っていても、資料は集まらない、街へ出たりして、取り組みを広めていくことで集まる資料もある
         
  • 司会:岡本さん(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)
    • 現地で現物の資料を収集するのに最も適しているのは現地の人
    • 現物資料の収集はトレーニングで比較的なんとかなる能力
    • 現物を収集し、その発行者からサインをもらってくるという職業を作り出し、それに国がアーカイブの予算をつけることが出来るのではないか
      • 政策として実現は可能か
         
  • 稲葉さん(神戸大学附属図書館)
    • それは実際に神戸で行われていた取り組み。予算をつけて、人をどんどん雇って、どんどん収集した
      • 避難所の写真など、網羅的に収集
    • 「人と防災と未来センター」は、プライバシーなどのの観点から公開できる資料と出来ない資料を分けている
    • 震災文庫はあくまでも図書館なので、公開出来る資料しか収集していない
        
  • 白石さん(総務省)
    • 記録・記憶をどう残すか、被災地同士で共通認識が定まれば、緊急雇用のひとつとしてアーカイブ事業が出来ることも考えられると思う
          
         

司会:岡本真さんの総括

  • 図書館版の「対口支援」を全自治体に実施できないか
  • 自治体間の協定ベースを策定できないか
    • 図書館を公務員間の協定に組み込む必要がある 
  • 都道府県立図書館の意義
    • 県立図書館は市町村図書館の上に位置するわけではない
    • 非常時においては、県立図書館長に一定の権限を付与すべきか
  • 地域史資料のデジタル化
    • 総務省を中心とした政策はすでに進行中
    • 何を残すか
  • データのアーカイブ
    • 残す対象:図書、チラシ、ビラ類、ミニコミ等
    • 災害のアーカイブである以上、次なる災害の減殺に貢献することが目的であるべき
    • 21世紀ひょうご創造協会のような事例
      • 現地雇用との組み合わせモデル
  • 公共図書館が素早く正常化することは他の施設への支援を出来るという事
  • 来年の図書館総合展では、図書館の対口支援に取り組んだ進捗状況を報告できるよう期待して、このフォーラムを締めたいと思います
       
       

フォーラムをみた感想

 1部、2部での発表や討論を踏まえて今後どのような政策や取り組みが必要なのかを、被災地の図書館長、支援者、政策に関わる代表者の3者が話し合う貴重な場でした。アーカイブに関する討論のなかでは、デジタル化を推進し支援の準備を進める側と、まだそこまでの段階に至っていないという側の齟齬が起きていることが明らかになるなど、復興の段階や進度について今後一層認識の共有を図っていくことの必要性を感じました。また、司会の岡本さんによって、1部から3部を通して浮かび上がった、これまでに起きていた課題の解決方法が提案されていました。その方法の問題点や実現可能性について3者で意見が交わされるなど、フォーラム開催の目的通り、報告会にとどまらない、今後の復興に大いにつながるフォーラムとなったのではないかと思います。
   

関連フォーラムの記録

   
   
記録:山下聡子