インタビュー「片山総務大臣に訊く」

第12回図書館総合展用に準備された片山総務大臣へのインタビュー映像が、
TIME with BOOKS図書館総合展のページにて公開されています。

第12回図書館総合展 図書館政策フォーラム特別企画「片山総務大臣に訊く」
  聞き手:慶応義塾大学教授 糸賀雅児/企画:図書館総合展運営委員会
 
このインタビューは、第12回図書館総合展で行われた図書館政策フォーラムに出席す予定だった片山総務大臣が、国会審議などの関係で出席できなくなったときのために前もって行われたものです。
当日は無事片山総務大臣が出席できたため、インタビュー映像はその場で公開されず、後日上記ウェブサイト内で公開されていたのですが、実は存在をあまり知られていなかったらしく、図書館総合展フォーラム2011 in 京都で開始前に流されていた時も、「あのインタビュー映像は公開されているのか?」「見てみたい」などの声がありました(当日のTogetter)。
そこで適切にご案内できず、また時間が経ってしまい申し訳ないのですが、今回そのインタビュー映像をレポートします。
 
もちろん、本当は片山総務大臣のインタビュー映像を実際にご覧いただくのが良いのですが、お時間のない方のために、インタビュー内容を記事でお伝えしたいと思います。。
(記録を取ってみて感じましたが、片山総務大臣のお話は難しい話題も噛み砕かれて話されていて、動画の方が分かりやすくなっています)
 
以下の記録は、担当者が動画を見、理解した範囲内での記録になります。
記録をまとめるにあたり、口述内容を省略したり、本意が変わらない程度で言い換えた文章で執筆しております。これはすべて、記録を簡潔にまとめるためにとった措置ですが、異なったニュアンスを感じさせる記述になっている可能性がないとは言い切れません。ですので、違和感を感じた場合や、気になった場合、引用される場合などは、ぜひ一度動画の内容を確認していただければと思います。

 

それではどうぞ!
(以下敬称略)
 
  

第12回図書館総合展 図書館政策フォーラム特別企画「片山総務大臣に訊く」

 

地域主権について

糸賀/
地域主権への道筋について、総務大臣としてどのようにお考えでしょうか?
 

片山/
地域主権というのは、地域のことは地域の皆さん、住民の皆さんで決めたら良いのでないか。それが可能になるように法律を変えていこうという試み。そのためには、決定権の権限委譲が必要である。
また、自治体が決定するための国からの関与をできるだけ排除することが必要。例えば、ひも付き補助金の廃止、つまり補助金の用途の制限もなくす必要がある。
そういったことを進めているが、しかし、なかなかうまく進んでいないのが現実。これに総務大臣として取り組んでいる。

もう一点、地域主権は自治体の自由度を増す試みだが、地方自治の本来の主役は住民。住民が強くならなければ意味が無い。団体自治と住民自治の両輪が必要である。
団体自治に加えて、団体の中で住民の意思が強く反映されるように、住民自治を強化する必要がある。
  

首長や議員に期待すること

糸賀/
政府が6月に決定した地域主権戦略大綱に以下の一節がある。
『国民が地域の住民として、自らのクラス地域のあり方について自ら考え、主体的に行動し、その行動と選択に責任を負うという住民主体の発想に基づいて、改革を推進していかなければならない。』
地方自治にはとりわけそれが強く求められている。
地域主権を進めていく上で、首長や市町村長、議員さんに何を期待しますか?
  

片山/
期待することはいっぱいある。
現行の制度では、お金を国にもらいに行こうとする。住民に何かするために、どうやったら国にお金をもらえるか、その条件を学ぶ。すると、住民の要望よりも、国から提示された条件に合うようにいつのまにか変わってしまう。本来の目的から逸脱してしまう。
そういうのはいけない。
首長は原点を忘れてはいけない。自分もそれをずっと自戒していた。

議会は自治体の最高意思決定機関。それが、本来の意思決定などの機能を上手く発揮できていない。首長の提案をそのまま通してしまう傾向がある。
本来なら住民の意向を反映して、予算などをチェックしなければならない。議会は本来の役割に戻って、住民の目線にたって、提案を直していくことが必要。
  

議会図書室や県庁内図書室について

糸賀/
自分の地域の政策を決定する上で、海外の動向、他府県の動向、試みをチェックして、自分の地域にふさわしいものを選んでいく必要がありますね。
片山総務大臣は議会図書室などの整備に尽力された。その立場から、議会図書室や県庁内図書室、役所の資料室についてどうお考えか。
  

片山/
非常に重要だと考えている。地方自治体には、必ず図書室を置くよう規定されている。これは、地域主権のための措置である。
議員は役所が提供する情報だけでなく、様々な情報を広く集めて判断しなければならない。その役割をはたすのが議会図書室である。

地方自治法の第100条にその規定がある。国会に証人喚問する国政調査権という役割があり、それと同等に議会図書室が位置づけられている。
議会図書室は議会の調査活動の拠点である。
にもかかわらず、地方自治体ではそれがほとんど活用されていない。それはいけない。
そこで、議会に働きかけて、情報や資料を得るために議会自ら変わるようになっていった。

また、職員に作ってもらって持って来られる政策の情報の出どころは中央官庁であることが多く、それだと中央官庁よりの政策ができてしまう。
それではいけない。図書館で調べる必要があるが、図書館に行くには距離がある。そこで、県庁内図書室を設置し、優秀な司書を置いた。
すると、資料の要請をすると、すぐに適切な資料が用意されるようになった。本当に重宝した。
そんなに費用はいらないので、ぜひ自治体に作ると良いと思う。そのためには、優秀な司書が必要だが。
  

「新しい公共」と図書館のつながり

糸賀/
今回の地域主権には「新しい公共」という概念が地域主権にある。
そこでは住民自らが意思決定する際に、NPOや住民の様々な団体が関わって意思決定をしていくことになるのだろう。
新しい公共と図書館のつながりはどうお考えか。
  

片山/
非常に重要なテーマ。
従来の公共は、税金、役所、役人を介して必要なサービスが提供されていた。これは従来型の公共であり、それだとどうしてもお役所仕事になってしまう。
そうではなく、新しい公共はお役所を介さず、市民の力によって必要なサービスを充足させようということ。
NPOや市民団体、企業といったお役酒ではないところの主体がこれから活躍するだろう。しかしそこには条件がある。
ひとつは資金の問題。市民団体が資金を用意することは出来ず、お役所に頼るとそれは昔の方法になってしまう。
そこで、税金とは違った形で市民から財源が提供される仕組みを作る必要がある。それは寄付である。税制を改革し、寄付で財源を集めやすくする。
もう一つは情報、資料をどこで得るかということ。その重要な拠点が図書館。図書館やレファレンスで、図書館が必要な情報を適切に提供できるようにする必要がある。これは非常に重要な役割である。
  

片山総務大臣が考える図書館の役割

糸賀/
話を図書館に移していくが、今後の我が国における地域主権の行程において、司書が図書館を支え、組織し、サービスを企画していくわけであるが、大臣が考える図書館の役割とは何か。
  

片山/
行政を評価する必要がある。地域のことは自治体ではなく住民が決めるということ。住民が行政を評価する必要がある。
ではその評価するものさしはどうやって身につけるのか?
一例として、市町村合併の評価をどうするかという話があった。住民がそれを評価する際に、その指標としてお役所に将来の財政推計や人口予測などの情報をもらいに行った。
しかし、お役所は自治体合併を推進したいのだから、自治体合併に都合の良い予測をした資料を用意している。市町村合併について評価するときに参照するのがそのような資料では、これはバランスが良くない。
そういうときに、図書館に中立的な、適切な資料を提供できれば、客観的、中立的に論じることができ、よりよい住民自治が築かれるのではないか。
図書館で、中立的な情報提供が行われることが、一番大切だと考える。地域主権改革の時代には、より重要になる。
  

図書館でマニュフェストが提供できないという制約について

糸賀/
図書館には司書がいて、中立的な情報提供が保証されている。今後、図書館の存在意義、図書館が提供する資料の意義は、今後もより重要になっていくだろう。
一方、公職選挙法の関係で、図書館では各政党のマニュフェストが提供できないように解釈されている。
住民自治を含んだ地域主権をすすめるにあたり、これは問題ではないだろうか?
  

片山/
私自身、なぜそうなっているか、今はよくわからない。
自分自身で情報、条文にあたり、なぜそうなっているのか点検したい。
  

学校図書館について

糸賀/
今年は国民読書年であり、全国各地で読書振興の取り組みが遂行されている。
そのなかで学校図書館が地域のこどもを育てる重要な役割を担っているが、総務大臣のご経験から、学校図書館についてどのようにお考えか。

片山/
知事をやっていて、身を持って学校図書館は重要だと考えるようになった。
ひとつは学力の低下がある。OECDによる学力調査で、年々日本の子供の学力、特に読解力が低下している。読解力というのは、資料を読み、情報を整理し、そこから自分の考えを導き出す過程である。単に本を読むわけではない。
そのため、読解力の低下は危惧すべき事象である。それに対し、基本的に資料を読む、読書教育が今後重要になる。
その拠点として学校図書館がある。資料などを用意し、子供たちがそこから情報を引き出せるようになってほしい。
本を与えるだけでなく、将来の図書館の使い方を教える役割もある。

しかし、多くのところで学校図書館はプアーである。
自分のところの公立学校では、予算をつけ、対処した。それだけで、学校図書館に息吹が感じられるようになった。
それを進めたが、全国的にはなかなか上手くいっていない現状がある。
学校図書館はあるが司書がいない。財源のない鳥取県でも頑張って配置したが、余裕のある都心部でも措置されていないのは残念である。
  

地域活性化交付金の図書館での活用について

糸賀/
地域活性化交付金の図書館での使われ方を、どう予想するか?
  

片山/
補正予算は経済の回復、雇用の拡大を目指して補助される。公共事業をやってほしくて自治体にお金を出す。
必要な雇用が満たされていない。消費者行政、DV被害者対策などは非常に大切だが、対象となる人々の主張が弱いなどで、なかなか目が向かない。
図書館も同様に、冷遇されてきた。あまり光があたってこなかった重要な分野に力を入れたく、補正予算を用意した。
国会議員からも同様の質問があり、このように答えたら、議員席から拍手が起こった。普段はヤジが多いが、野党席からすら拍手が起こったのは驚きだった。
そこからも、このような重要な分野に光をあてることは、みんな考えていたことなんだなとわかった。

地方交付税も、従来はハード事業を優遇する傾向があるが、そこを改善して、自治体として重要なところ、
知的な分野などにもスタッフが置けるよう、つなげていく活動が出来れば良いと考える。
  

弱い地域での補助について

糸賀/
全国の図書館関係者が勉強し、上手く使えるようになればと思う。
過疎地域自立促進特別措置法に、図書館の項目が追加され、建設が行い易くなった経緯があるのでは。なんでもかんでもというわけではないが、国の補助が必要なところでもあるだろう。
弱いところでの補助について、どうお考えでしょうか。
  

片山/
制度的に、河川等の補助があった。図書館などは、もともと自治体に整備を進めましょう、というカテゴリーに入ってなかった。
しかし、そうではなく、自治体が重要だと思うことを優先的に行えるような制度に変えていかなければならない。これが私の仕事である。
道路も重要だが、多くの市民は図書館、学校図書館を整備してほしいと考えている人もいる。自治体はそういう声の弱い部分にも目を向けて、何が重要なのか考えていく必要がある。
従来の市民も、声が小さかったかもしれない。
私は図書館関係者は怒るべきだと思う。今回ようやう図書館が含められたが、過疎法は今まで「図書館は整備しなくても良い」というスタンスだった。今になってやっと、図書館を整備するべきだという認識に変わったと思う。
  

最後に、全国図書館関係者へのメッセージ

糸賀/
私たちも声をあげていくべきでしょう。大臣がおっしゃった財政面、制度、法律面での後押しを受けて、これから図書館関係者はなおいっそうの図書館進行に向けて努力する必要があると思います。
片山総務大臣から、全国の図書館関係者に向けてメッセージをお願いします。
  

片山/
今まで自治体はハード事業を借金してでもやれと言っておきながら、人を削っていく方針だった。これは間違いではないが、本来は自治体は住民が必要とされていることをやっていくのが仕事である。私は、自治体が適切な事業をすすめることを支援したい。必要な分野に人を配置し、必要な仕事をする。
知の地域づくりを推進したいが、その中では図書館は重要な拠点になる。自治体の皆さんにも知っていただきたいし、伝えていこうと思う。
ですから、図書館関係者の皆さんも、臆せず自分たちが持っている潜在的なパワーを皆さんに知っていただくよう、働きかけをしていけば良いでしょう。
  
  

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記録は以上になります。
  
第13回図書館総合展/学術情報オープンサミット2011は2011年11月9日(水)-11日(金)にパシフィコ横浜で開催されます。
今後も、図書館総合展に関わる情報やレポートを不定期に公開していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。